僕の名前はジャイオ、体は小さい方でした。クラスで列を作っても前から5番目くらいでしたが、遊びは何でもやりました。たとえばソフトボール、メンコ、ビー玉、川でふな釣り、水泳など。そんな中、毎日の食卓に並ぶ卵に興味を持ち始めました。
1. 餌を与えるチャンス

どうしたの。卵を真剣に見つめて。

鶏は卵を毎日産むの?

そうよ。毎日きちんと餌をあげると大きな卵を産んでくれるのよ。

じゃ僕が餌をあげてもいい?

いいけど・・・餌と水を毎日あげないといけないから大変よ。

どんなものをあげたらいいの?

大根の葉や野菜のくず、トウモロコシをつぶしたもの、ご飯の余りなど何でも食べるのよ。

じゃ、やってみていい?

古い包丁とまな板を用意してあげるのでひとりでやってみなさい。

うん、わかった。

こんな小さい子に包丁を持たせて大丈夫かい。

この子は柿でもリンゴでも大人と同じように上手に皮をむくことができるので心配ないですよ、お母さん。

でも、最初は大根の葉の切り方やトウモロコシのつぶし方など教えておいたほうがいいね。

はい、そうします。
2. 母親の餌づくりの指導
話がまとまり、鶏小屋のまえにしゃがんで母親が実演してくれました。祖父母も父も兄弟たちもじっとみていました。


切れない包丁は力がいるね。

切れ味がいいとけがをするからね。

大根の葉はどのくらいに切ればいいの。

1cmくらいにしてね。切るときは左手の親指を内側に曲げて、包丁を親指を曲げたところに当てながら切るとけがをしないで済むのよ。

わかった。 それからトウモロコシはどうやって砕くの。

下に新聞紙を敷いて平らな石の上にのせて静かにたたくの。すると新聞紙の上に小さな粒が散らばるのでそれを集めて大根の葉などとまぜて鶏にあげると喜ぶよ。
3. 独り立ち
その日から新しい毎日の日課が始まりました。明日は何をあげたら喜ぶかなとそればかりを考えるようになりました。小屋の前ではトントントン、サクサクサクという音が鳴り始めるようになりました。


コッコ、今日もおいしいご飯だよ。コッコッコ。トントントン、サクサクサク、今切り終わったらあげるからね。それまでおいしい水で我慢しなよ。コッコ。
それからの日々は徐々に卵の数や大きさが気になり始めました。鶏小屋に入り、奥の方に卵を産むところにわらを敷いてあげました。産むほうも快適だし、収穫するのも小さなボールに集めたりしてとても楽でした。

コッコ、今日はカルシウムをたっぷりあげるよ。貝殻をつぶすのでトントンとうるさいけど少し待っててね、コッコッコ。大きくておいしい卵を産んでね。
4. 鶏用の飼料袋の購入とその成果
高学年になると、栄養のことを考えているうちに鶏の餌が肥料屋さんに売っていることがわかり、それを買うことにしました。自転車の荷台に積んで鶏の飼料袋を買ってきていいかどうかお母さんに尋ねました。

気を付けて買ってくるんだよ。

はーい。
それからの毎日は栄養を十分にあげているという充実した気持ちの日々でした。時々は鶏たちを広い庭に開放してあげて庭に餌をまいてあげました。

ある日の朝食のときのことでした。

最近卵がりっぱだね。中には黄身が2つもあるよね。

今日の一番大きいのはおじいちゃんにあげる。

ありがと。黄身が2つ入っているかな?

ジャイが頑張っているから食卓がにぎやかでいいね。
5. 卵の重さを量る
僕はますます卵の大きさに興味を持つようになり、毎日の収穫数と1個1個の重さを量るようになりました。


卵の重さを量ってどうするの。

何グラム以上で黄身が2つになるか観察しているんだ。

今度大きい卵があったら僕にちょうだい。

お兄ちゃん、ずるい。私の方が先ね。

心配するな。みんなに順番であげるよ。
6. 黄身が2つの卵の収穫
二か月くらい観察しました。すると1個60g以上の卵には黄身が2つ入っていることがわかりました。食卓で大きい卵を順番にあげていくうちに歓声が上がるようになりました。


今日は大きいのが収穫できたのでおばあちゃんに。多分黄身は2つだよ。

本当だ。すごい。どうしてわかるんだい。

大きいから適当に言っているだけさ。
数日たって大きい卵が収穫できたので弟にあげました。

絶対黄身は1つだと思う。

間違っていたね、お兄ちゃん。黄身が2つじゃない。

どうしてそんなに当てらるんじゃ?

実はね。毎日卵を1個1個はかりで重さを量ったんだ。するとね、60g以上の卵は黄身が2つ入っていることがわかったんだ。

餌をあげながら観察もできたなんてすばらしいね。

単に餌をあげることから、栄養のあるもの、そしてその結果立派な卵、ついには黄身の2つある卵に興味が移っていっただけです。

鶏の餌やりからこんな観察までできるようになって成長したわね。私は包丁とまな板を預けただけなのに。

ジャイに拍手‼こらからも立派な栄養のある卵をよろしく。

こんなに褒められてはこれから先が責任重大だね。
ジャイオの毎日運ぶ卵が食卓の話題になり、明るい朝食となりました。何気なく食べていた卵が家族全員に活気を与えたのです。自分の餌やりから食卓にだす卵でこんなに喜んでもらえるなら、なお一層頑張らなくちゃと、ジャイオは心ひそかに思うのでした。